定格荷重と定格寿命

リニアブッシュの定格荷重は、荷重方向に対するボールの位置で変わります。寸法表中に記載されている基本定格荷重は、1条列の負荷ボールが荷重の真下にくるときの値を示します。表1に示します。ハウジングとのはめあいは通常すきまばめで、すきまをおさえる場合は中間ばめとします。
荷重方向に対して2条で均等に負荷するように取付けると表1のように定格荷重が変化します。

表1   リニアブッシュの定格荷重
ボール条列 ボールの位置 定格荷重
3条
1×C
4条
1.41×C
5条
1.46×C
6条
1.28×C
8条
1.25×C

C: 寸法表中参照

定格寿命の算出

THKでは、リニアブッシュは50km定格寿命で定義しており、定格寿命(L10)は基本動定格荷重(C)とリニアブッシュに負荷する荷重(PC)から次式により求められます。

L10 定格寿命 (km)
C 基本動定格荷重 (N)
PC 計算荷重 (N)

※ ストローク長さが外筒長さの2倍以下の場合は、上記の定格寿命式が適用されない可能性がございます。

定格寿命(L10)の比較を行う際には、基本動定格荷重が50km、100kmのどちらで定義しているかを考慮する必要があり、必要に応じてISO14728-1に基き基本動定格荷重の換算を行います。

ISOで規定されている基本動定格荷重の換算式:

C50 定格寿命が50kmとなる基本動定格荷重
C100 定格寿命が100kmとなる基本動定格荷重

使用条件を考慮した定格寿命の算出

実際の使用では稼動中に振動や衝撃を伴う場合が多いため、リニアブッシュの作用荷重の変動が考えられ正確に把握することは容易ではありません。また、転動面の硬さや使用環境温度、ブロックを密着に近い状態で使用する場合も寿命に大きく影響します。
これらの条件を考慮すると、次式(2)により使用条件を考慮した定格寿命(L10m)を算出することができます。

使用条件を考慮した係数 α
α 使用条件を考慮した係数
fH 硬さ係数 (使用条件を考慮した定格寿命の算出図8参照)
fT 温度係数 (使用条件を考慮した定格寿命の算出図9参照)
fC 接触係数 (使用条件を考慮した定格寿命の算出表10参照)
fW 荷重係数 (使用条件を考慮した定格寿命の算出 表11参照)
使用条件を考慮した定格寿命 L10m
L10m 使用条件を考慮した定格寿命 (km)
C 基本動定格荷重 (N)
PC 計算荷重 (N)
外筒1個または2個密着でモーメント負荷の場合

外筒1個または2個密着使用でモーメントを負荷する場合は、モーメントを負荷したときの等価ラジアル荷重を算出します。

Pu 等価ラジアル荷重 (N)
(モーメント負荷による)
K 等価係数 (等価係数表表4~表6参照)
M 負荷モーメント (N・mm)

ただし、Puは基本静定格荷重(C0)内とする。

モーメントとラジアル荷重を同時負荷の場合

モーメントとラジアル荷重を同時負荷の場合は、ラジアル荷重と等価ラジアル荷重の総和より寿命を算出します。

fH : 硬さ係数

リニアブッシュの負荷能力を十分発揮させるためには、転動面の硬さを58~64HRCとする必要があります。
この硬さより低い場合、基本動定格荷重および基本静定格荷重が低下しますので、それぞれに硬さ係数(fH)を乗じます。
通常、リニアブッシュは十分な硬さが確保されているのでfH=1.0になります。

fT : 温度係数

リニアブッシュを使用する使用環境が100℃をこえるような高温の場合は、高温による悪影響を考慮して図2の温度係数を乗じます。
また、リニアブッシュも高温対応の製品にする必要がありますのでご注意ください。

注) 使用環境温度が80℃をこえる場合は、金属製リテーナを組込んだものをご使用ください。

fc : 接触係数

直動案内をする外筒を密着状態で使用する場合では、モーメント荷重や取付面精度が影響し均一な荷重分布を得ることが難しいため、複数の外筒を密着使用する場合は表2の接触係数を基本定格荷重(C)、(C0)に乗じてください。

注) 大型の装置に不均一な荷重分布が予想される場合は表2の接触係数を考慮してください。

表2   接触係数(fC
密着時の外筒数 接触係数 fc
2 0.81
3 0.72
4 0.66
5 0.61
通常使用 1

注) 大型の装置に不均一な荷重分布が予想される場合は表2の接触係数を考慮してください。

fw : 荷重係数

一般的に往復運動をする機械は運転中に振動や衝撃を伴うものが多く、特に高速運転時に発生する振動や、常時繰返される起動停止時の衝撃などのすべてを正確に求めることは非常に困難です。従って、実際にリニアブッシュに作用する荷重が得られない場合や、速度・振動の影響が大きい場合は、経験的に得られた表3の荷重係数を基本動定格荷重(C)に除してください。

表3   荷重係数(fw
振動・衝撃 速度(V) fw
微速の場合
V≦0.25m/s
1~1.2
低速の場合
0.25<V≦1m/s
1.2~1.5
中速の場合
1<V≦2m/s
1.5~2
高速の場合
V>2m/s
2 ~3.5

寿命時間の算出

定格寿命(L10)が求められるとストローク長さと毎分往復回数が一定の場合、寿命時間は次式により求められます。

Lh 寿命時間 (h)
s ストローク長さ (m)
n1 毎分往復回数 (min-1